昨今、食物アレルギーを持つ方は非常に増えていますね。
わたしはここ数年シェフとしてレストランやカフェで働いてきましたが、たびたびアレルギーのお客さんが来店し「卵アレルギーなので卵は除去してください」といった要望もよくあります。
正直、こういったケースの注文は一番神経を使いますね。
というのも、アレルギーのお客さんに提供する料理にアレルゲンが混入してしまった場合、最悪命に関わるから。
この記事ではアレルギーのお客さんに最大限安全な料理を食べてもらうために、飲食店のスタッフ(キッチンもホールも)がすべき対策方法をまとめました。
食物アレルギーの基礎知識
まずは食物アレルギーについて簡単におさらいしましょう。
免疫の過剰反応により、本来害のない食品に対しても「これは有害なものだ!」と認識し攻撃してしまい、じんましんや腹痛など様々な症状を引き起こすこと。
<アレルゲン>
アレルギーの原因となる物質。厳密には特定のタンパク質などを指すが、「卵」「そば」といったように食品の名前を指すこともある。
<アナフィラキシー>
皮膚・粘膜・消化器・呼吸器・循環器の症状がある(じんましん・目が腫れる・嘔吐・呼吸困難など)。皮膚症状+消化器症状など、2つ以上の重い症状が同時に起こる。
<アナフィラキシーショック>
アナフィラキシーによって血圧低下・意識障害などを起こし命の危険がある状態。
特定原材料と準特定原材料
アレルゲンとなる原材料はすべてがパッケージに表示されるわけではなく、以下の28品目のみが表示の対象となります。
特定原材料(7品目)
アレルギーを起こすことが明らかとなった食品のうち、特に発症数が多いもの(卵、乳、小麦、えび、かに)と重篤な症状を呈するもの(そば、落花生)。
卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに
準特定原材料(21品目)
アレルギーを起こすことが明らかとなった食品のうち、発症数や重篤な症例が継続して相当数見られるが特定原材料よりは少ないもの。
あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、アーモンド、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン
特定原材料でも準特定原材料でも酒類(みりん、料理酒を含む)はアレルギー表示が免除されます。
オレンジリキュールやりんご酒にもアレルギー表示はないので要注意!!!
飲食店ですべきアレルギー対策4つ
1.メニューにアレルゲンを表示する
特定原材料については、メニューの料理名の横に何が入っているか表示しておくと良いでしょう。
お客さんが一目見てわかるので、アレルギーのお客さんからその都度呼ばれて説明する手間が省けるし、確実にアレルゲンを避けることができます。

すべて字で書くとごちゃごちゃするので、上の画像のようにマークで表示するのがオススメ!
特定原材料以外のアレルゲンについてはその都度確認!
世の中には特定原材料のアレルギーはないけど準特定原材料のアレルギーを持つ人もいれば、準特定原材料ですらない食材(米、なす、トマト、玉ねぎなど)のアレルギーを持つ人もいます。
すべての食材をメニューに表示することは難しいので、たとえば
「トマトアレルギーなのでこのメニューからすべてトマトを抜いてください。生のトマトもドライトマトも缶詰のトマトも」
と言われた場合、その料理に盛り付けるものすべてについてトマトを使っているかどうか確認する必要があります。
アレルゲンチェックに役立つアプリ
ここでアレルゲンチェックに役立つアプリをご紹介します。

アレルギーチェッカーはバーコードを読み取るだけでアレルゲンの情報を確認できる便利なアプリです。(iPhone、iPadで利用可能)
約126,500点の加工食品に対応しているので、市販の調味料を使っているお店にオススメ!
2.レシピを紙に書いておく
調理スタッフはキッチンで作るすべてのものに関してレシピを作り、ノートに書くか紙に書いてファイルに入れ、所定の位置に保管しておくことをおすすめします。
人間の記憶力は曖昧
店では口頭でレシピを伝承し、頭で覚えている材料を入れて作っていることが多いです。
しかし、口頭での伝承はいわゆる伝言ゲーム、誰かが間違えたらその後間違ったレシピが伝わってしまいます。
正しいレシピを覚えていても作る時に間違えて違う食材を入れてしまうことも。
また、いざアレルゲン除去のリクエストが入った時に「このドレッシングって◯◯入ってるっけ?」となることだってありますよね。
そのような場合にもレシピがあればそれを見て確認できるので、より確実なアレルギー対応ができます。
新人もレシピを見れば間違いなく作れる
入ったばかりの新人調理スタッフはまだすべての料理の作り方を覚えていませんが、レシピがあればそれを見ながら間違いなく作ることができます。
実際わたしもレシピがある職場では初日からガンガン一人でディップだのソースだの作っていました。
レシピがあればアレルゲン確認や新人教育の手間が省けて効率的
3.普段と違う食材を使った時はラベルを貼って明示する
また、在庫の問題で普段使っている食材が切れてしまい他の食材で代用することもあります。
- ガーリックパウダーがないのでオニオンパウダーで代用
- 洋梨がないのでりんごで代用
このような場合、必ず他の食材で代用した旨を書いたラベルを保存容器に貼り、ホール・キッチンスタッフ全員に口頭でも知らせましょう。
ホワイトボードがあればそこにも書いておくと共有しやすくて良いですね。
ショーケースに入れて販売する商品ならばポップにも書いておくと尚良いです。
洋梨のタルトはりんごに変更していることを明示(保存容器への表示・スタッフへの周知・ポップへの注意書き)
↓
りんごアレルギーのお客さんはそれを避けることができる
4.ホールスタッフへの食物アレルギー教育
キッチン内ではアレルギーに関する情報共有、新人さんが入った時の教育をすることと思いますが、意外と抜けているのがホールスタッフの教育。
キッチンスタッフは調理師免許を持っている人やそうでなくてもアレルギーに関する基礎知識のある人が多いですが、ホールスタッフは食品関係の知識がない人もたくさんいます。
なので、「このぐらいは当然知っているだろう」と思わず、新しいホールスタッフが入ったらキッチンスタッフ直々にアレルギー教育をしましょう。
教育を担当する管理職の方はアレルギーについての情報がまとまった本を1冊持っておくと良いですよ!
食物アレルギーの対応マニュアルを作って壁に貼っておこう
また、食物アレルギーのお客さんが来店した場合の対応についてもマニュアル化して、壁の見やすい位置に貼っておくと良いでしょう。
ファイルに綴じてしまうとわざわざ見なくなるので、目につく場所に掲示すること
- お客様に食物アレルギーがあると言われた場合、何にアレルギーがあるのか聞く(小麦の場合グルテンに反応しているので、小麦以外にもグルテンを含む大麦などは除去するかお客様に聞く)
- お客様が注文したいメニューにアレルゲンが入っているかどうか確認する(わからなかったらキッチンスタッフに聞く)
- アレルゲンが入っている場合、アレルゲンを抜いて提供するか他のメニューにするかお客様に聞く
- アレルゲンを抜いて提供する場合も他のメニューにする場合も、同じキッチン内でアレルゲンを含む食材を使用しているため、意図せぬ微量の混入の可能性はあることと、それについては責任を負いかねる旨を説明する
- できた料理をキッチンから受け取る際は、アレルゲン除去をしたものかどうか確認してから提供する
※重度のアレルギーを持つお客様には特に危険が伴うことをよく説明し、理解していただきましょう。
※キッチンがアレルゲンを除去し忘れて通常の作り方で作ってしまうこともあるし、他のお客様から同じ料理の注文が入っている時には取り違えてしまう可能性もあるため。
意図せず微量のアレルゲンが混入することもある
正直言ってアレルゲン食材を店で使っている限り、100%アレルゲンを取り除くことは不可能です。
飲食業に携わる身として最善を尽くしたいのはやまやまですが、その店でアレルゲンとなる食材を扱っている限りリスクは0にはできません。
なので、微量のアレルゲンにも反応してしまう重度のアレルギーのお客様はお断りするのが賢明。
万が一店で食べたものでアレルギーを発症し命を落としたら信用ガタ落ち、最悪店がつぶれる
わたしの経験から、以下のような場合に微量のアレルゲンが混入してしまうことが考えられます。
加工食品の工場内での混入
たとえば米粉の工場で小麦粉も生産している場合、設備や空気中からの小麦の混入が起こる可能性があります。
そういった場合は通常パッケージに
- 小麦を含む製品と同じ設備を使用しています
- 本製品製造工場では小麦を原料とした製品を製造しています
といった注意書きがありますが、調理スタッフですらそこまで把握していないことがほとんどです。
調理器具を介しての混入
特にまな板は傷が多く汚れが溜まりやすいので、アレルゲン食材を切った後に洗っても傷の間にわずかに残っていることがあります。
たとえばトマトを切ったまな板を洗浄してからきゅうりを切る場合、まな板にわずかにトマトが残っている可能性も。
そのトマトが次に切るきゅうりに付いてしまい(二次汚染)、そのきゅうりを食べたトマトアレルギーの人がアレルギー反応を起こしてしまうこともありうるのです。
従業員の体を介しての混入
卵を扱った後ちゃんと手を洗わずに作業を続けた場合、他の食材が汚染され卵アレルギーの原因となることがあります。
加工食品に表示されていないごく微量のアレルゲン
アレルゲンの総タンパク質量がごく微量の場合、アレルギー表示は義務ではありません。
たとえ特定原材料(7品目)であっても、「その食品に含まれるアレルゲンの総タンパク質量が数μg/mlまたは数μg/gの場合アレルギーを発症することはないだろう」という専門家の見解により表示が免除されているのです。
しかし、本当に重度のアレルギー患者さんはそれでも発症してしまう可能性は0ではないので、店として「100%アレルゲンフリー」を謳うことはとても危険です!
元々アレルゲン食材を使っていない店でもアレルギーリスクはある
さらに、特定のアレルゲン食材を使っていない店でも油断はできません。
たとえばみなさんのお店が一切小麦を使っていない100%グルテンフリーの店だとします。
でも調理スタッフが家でパンを食べた場合、爪の中に微量のグルテンが残ってそれが店の料理に混入し、小麦アレルギーのお客さんがアレルギー反応を起こすことだってありうるのです。
業務外でスタッフが触った食品までは管理しきれないので、アレルゲン混入はいくらでも起こりうる
飲食店スタッフはお客さんの命を預かっているということを肝に銘じよう
人の命を預かる職業というとお医者さんやパイロット、電車の運転手さんをイメージするかもしれませんが、飲食店スタッフも人の命を預かる職業であるということを覚えておいてほしいです。
アレルギー対応に自信がなければ「アレルギー対応はできない」と事前に断る
キッチンで働いた経験から言うと、飲食店でのアレルギー対応は完璧にするのは不可能です。
重度のアレルギー患者さんはお断りすべきですし、軽度の患者さんでもアレルギー対応に自信ないなと思ったら最初から「アレルギー対応していません」と断っておきましょう。
- 当店ではアレルギー対応は行っておりません
- 微量のアレルゲンが混入する可能性がありますので自己責任でお願いします
- このメニューには◯◯が含まれておりますので◯◯アレルギーをお持ちの方はご遠慮ください
無理して対応した結果お客さんの命を奪ったり体調を悪くするより100万倍マシですからね。
たとえ命が助かったとしても、店側にもお客さん側にも大きな負担がかかりますし、「あの店アレルギー出たらしいぞ」なんて評判が広まったら客足が遠のいて売上減、最悪店の存続も危ぶまれますしね。
今回ご紹介した注意点を参考に、今一度みなさんのお店のアレルギー対応を見直してみていただけると嬉しいです。

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